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(2020年に掲載された記事の復刻版です)
生物資源科学部では卒業研究の期間が2年設けられています。すべての学生は、3年生になった時点で研究室に所属し、朝から晩まで実験などをして過ごすことになります。他の多くの大学では1年間(就職活動期間を除くと実際はもっと短くなります)のところ、2年間研究を行うわけですから、その間に出した大量のデータをまとめて卒業論文を執筆するのは本当に大変な作業です。
その卒業論文の提出期限が迫っています。提出が終わった後には、すぐに発表会が待っています。発表会には、多数の学生だけでなく、教員も多数参加します。プロの研究者の前で2年間の成果を報告するのは、学生にとって大きなプレッシャーです。当然ながら、グループで発表などという甘いシステムではなく、たった一人で厳しい質問に答えねばなりません。
応用生命科学科(澳门皇冠2年度より生命環境学科生命科学コース)の菅研究室では、5名の学生が卒論の追い込みに入っています。そのうちの一人、日野礼仁さん(愛媛県久万高原町出身)は、カプサスポラという、世界でも2か所でしか研究されていない珍しい生物を研究しています。この生き物は、単細胞生物でありながら、我々動物に非常に近縁で、ヒトなどとよく似た遺伝子セットを持っています。つまり、動物がまだ単細胞生物だった時代の生き残りです。日野さんは、カプサスポラ細胞の間でタンパク質を介したコミュニケーションが成立しており、それが動物の多細胞化の原動力の一つとなったのではないかという仮説を確かめようとしています。つい一週間前に(恐らく)先生から風邪をうつされ、しばらく寝込みましたが、気合で復活しました。つい先日、完璧と思って提出したはずの卒論原稿が真っ赤に添削されて返ってきました。今は真っ青になって修正作業中です。
原口雛子さん(鹿児島県沖永良部島出身)は、クレオリマックスという、カナダで見つかった単細胞生物を研究しています。クレオリマックスは、カプサスポラと同様、動物がまだ単細胞だった時代の生き残りと考えられています。原口さんは、この生き物にしか見られない非常に珍しいタイプのチロシンキナーゼという遺伝子を研究しています。チロシンキナーゼは、人間では癌の原因遺伝子としても知られますが、癌になることのない単細胞生物が何故かそのチロシンキナーゼを持っているのです。原口さんは、そのチロシンキナーゼをクレオリマックス細胞の中で強力に働かせることで、その機能を探ろうとしています。いわば「癌の起源」の研究です。実験はほぼ終了したのですが、まだ納得のいかない部分が残っており、卒論提出まで1週間を切ってもなんとまだ実験をやっています。
さて、彼らは無事卒業することができるのか?彼らが卒論発表を終えた後、果たして指導教員はまだ生きているのか? 生命環境学部(澳门皇冠2年度より生物資源科学部)では、卒業ぎりぎりまでとことん学生の面倒を見ています!